北支部 秋の一泊研修旅行の報告  ~ 地域福祉の原点・岡山県を訪ねて ~

北支部 秋の一泊研修旅行の報告  

~ 地域福祉の原点・岡山県を訪ねて ~
 
 
今年の研修旅行は、9月29日(土)~30日(日)の日程で、地域福祉の原点・岡山県を訪ねてきました。穏やかな瀬戸内に面したこの地域は、古くから独特の福祉文化を持ち、近代国家の歴史の中で、セツルメント(岡山博愛会)や、A.アダムス、石井十次、留岡幸助、山室軍平を輩出したことでも有名です。
 
 
ミステリ-ツア-2012と題して・・・・・ (北支部:前田照志より)
 
石井十次(1865~1914)、1人の貧しい巡礼者の子を預かったことをきっかけに、医学の道を捨て児童救済事業を開始。明治の初期に、日本で初めての孤児院である岡山孤児院を作り、「児童福祉の父」と呼ばれている。
 
偉人の功績を学ぶため、名所・旧跡を求めて、岡山へ向かう。しかし、当時の建物、静養館(十次の最後の住まい)や方舟館は、すでに郷里の宮崎県茶臼原に移築されていた。建物の一つ一つが、日本中の多くの支援者の善意の結晶であり、職員・子供たちの愛と涙がしんみこんでいると考えたからである。十次は、フランスの思想家ルソ-の「エミ-ル」に触発され、児童教育から次の理想へ進むため、寄付依存ではない農業自立の「福祉・教育・農業・芸術」の融合によるユートピアづくりの夢のため、明治27年から、岡山より移住を開始し、建物も解体され茶臼原に再現されたということである。
 
あらたに、石井十次の足跡を探りに、第23回日本福祉文化学会全国大会に飛び入り参加する。「21世紀の地域の絆と福祉を考える」をテーマに、国際医療ボランティア・AMDAの理事長が「地域力と絆」と題して記念講演が始まろうとしていた。
 
世界各国で行ってきた援助活動の原則は、「AMDA人道支援外交の3原則(困った時はお互いさま)」① 誰でも他人の役に立ちたい気持ちがある。②この気持ちの前には、民族・宗教・文化等の壁はない。③援助を受ける側にもプライドがある。「助けてやるの精神」では、失敗する。相手の存在に敬意を表した活動「横一(よこいち)の精神」こそが、相互の絆を作る。「横一の精神」とは、正しいと思われる援助をすることは、「正」の字のごとく、「一」に「止める」と書く。「一」とは相手のプライドであり、援助にせよ何事を行うにしても、相手のプライドを大切に思う心が必要であり、常に相手の「横一」が何か考えて活動することの重要性を強調。フランス人の「横一」のパリへ、攻め込んだヒットラ-と、「横一」を守ったビスマルクを例にして説明された。まるでAMDAの職員として、明日から国際援助に行く思いにさせるような魅了する講演であった。
 
学会が終了したころには、日も暮れ、外は真っ暗になっており、名所・旧跡巡りが、学会参加となってしまった一日であった。
 
翌日、他に何か手掛かりはないかと、町を散策する。偶然にも、加計美術館に立ち寄った時、「画家 児島虎次郎と児童福祉の父 石井十次」展が平成15年に当美術館で開催された、パンフレットに出会うことになる。この展覧会がきっかけで、「石井のお父さんありがとう」石井十次の生涯(松平健 主演)山田火砂子監督の映画化に発展したという。(写真参照)
 
北支部 秋の一泊研修旅行 ( H24.9.29~30 ).jpg
 
石井十次と大原孫三郎が縁となり、福祉、事業、芸術、文化など様々な分野の人々が交流していった岡山。林源十郎、留岡幸助、山室軍平、徳富蘇峰、原澄冶、新島襄、棟方志功・・・・・・・
 
そして今では、倉敷の町並みは、大原美術館を中心とする芸術の色彩が強いように感じられるが、しかしその源流には十次の精神が脈打っているのであろう。
 
「石井十次に学ぶ」研修は、文化を縦糸に、福祉を緯糸に織り紡ぐ「文化としての福祉」の一端に触れられた旅となった。尚、石井十次の記事(大阪北支部 杢さん)次回「なにわだより」掲載予定。

 

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